上越国境 三壁山、三引山 2010年4月25日
所要時間 5:01 駐車場−−6:10 三壁山−−6:44 三引山 6:49−−7:39 駐車場
野反峠から見た野反湖 |
阿能川岳から下山後、仏岩トンネルでも雪が降りしきっていたが猿ヶ京に下りると嘘のように晴れ渡り、中之条町で買い物を済ませてしばし昼寝し、パソコンで阿能川岳の記録を打ち込んだ。その後、野反湖目指して進んだが、標高は1500mを越える中央分水嶺だから吹雪いていてもおかしくはなく、路面凍結が心配だった。しかし六合村に入っても快晴が続き、坂道の途中にも新雪は見られないまま野反湖半に到着、こちらは谷川岳周辺より降雪が少なかったようだ。さすがに気温は低いが路面が乾いていれば問題なく、除雪終点の駐車場に到着。先客は1台の車だけで主は不在なのでテントを背負って山の中らしい。
翌朝、晴天で放射冷却+寒気が入って気温は下がり、真冬並みの-10℃でペットボトル飲料が凍ったのは久しぶりだ。しかし雲一つない快晴で風も弱く絶好の春山日和。この冷え込みだから雪もカチカチに締まって最高だろう。今日はワカンは持たずにピッケルとアイゼンを持って出発する。ここで既に標高は1510m、三引山は1939mなので標高差は400m+αしかなく楽勝だ。
除雪終点 | 堰堤上のみ雪がなかった |
ロッジはまだ営業していない | 三壁山登山口の標識 |
キャンプ場までの道は堰堤上を除いて雪で覆われているが全く沈まない硬く締まった雪だった。古い足跡が残っているが大きく沈んだ形跡があった。おそらく先週末の降雪直後の足跡だろう。野反湖ロッジ前で右手の斜面に取り付いて、バンガローが点在する斜面を適当に上がっていく。夏道があるのだろうが最初から一面の残雪で全く分からないが、藪は完全に埋もれているので好き勝手に歩ける。偶然、三壁山登山口の標柱のそばを通過、やはりこの尾根上に夏道があるらしい。以前歩いたはずだが全く記憶がない。
尾根に朝日が当たりだす | 新雪の分しか足跡が残らないほど締まっていた |
バンガローが終わると明るい落葉樹林の尾根になり、快適な雪の上を順調に歩いていく。古い雪の上に昨日降った新雪が1cm程度積っているが非常に軽い雪でラッセルとは程遠いが、硬い雪との間が弱層になっていて、そこを境界面として滑りやすく登山靴のエッジを立てて登っていく。まだ先週購入したばかりの新品で靴底は硬くエッジを切りやすい。アイゼンをつけたほうが歩きやすいだろうが、危険を感じない斜面だし面倒なのでそのまま進んでいく。
急斜面直下。右を巻き気味に登った | 緩斜面帯に出る |
標高が上がるとブナ科の樹木からダケカンバに変貌、さらに標高を上げるとシラビソ樹林に変わり高山の雰囲気が漂う。兎や正体不明の小動物、そしてカモシカの足跡など人間の足跡以外は結構多い。標高1700〜1750mで傾斜が急になり雪が硬いこともあってアイゼンを付けようかと思ったが、どうにか登山靴のエッジを効かせてジグザグに登り、最後は右に巻くように緩斜面に登り上げた。
ダケカンバからシラビソに移っていく | シラビソ樹林突入。目印多い |
これより上部はなだらかな稜線が続き、深いシラビソ樹林に入ると表面から新雪が無くなって滑りにくくなった。立ち木には結構な数の目印が付いているが、これは夏道の目印なのだろうか、冬ルートの目印だろうか。やや広い尾根でガスったら目印が役立ちそうだが今日のような好天では無用の長物だ。とにかく一番高い場所で歩きやすいところを選んで進んでいけばいい。
もうすぐ1930m肩 | 三引山に続く尾根上の雪庇 |
再び傾斜が緩むと1930m肩に乗り、谷を挟んだ反対側に三引山とそれにつながる尾根が樹林を通して見えた。まじめに地図を見ればいいのだが横着をして尾根の接続点を目視で確認しようと尾根の北側に下って木の隙間から様子を窺うと、ジャンクションピークはまだ先のようだ。どうせ三壁山も近いことだし、三引山の前に三壁山に立ち寄るのもいいだろう。軌道修正して尾根上に戻り、深いシラビソ樹林を西へと向かう。
先に見えるピークが三引山 | 三壁山山頂 |
三壁山東側から見た白砂山 | 三壁山東側から見た佐武流山 |
三壁山東側から見た岩菅山〜烏帽子岳 | |
三壁山東側から見た東の展望(クリックで拡大) |
雪庇の壁が現われると三引山へと続く尾根分岐で、真っ白く気持ちよさそうな稜線が待っていた。ここは三壁山山頂に立ってから向かうとして高みを目指す。右手にはこれまた真っ白な稜線の岩菅山から烏帽子岳の稜線。なだらかに尾根を登り、最後はシラビソ樹林の平坦地が三壁山山頂だった。一度立った山頂だが記憶がほとんどない。確か5月終わりくらいに登ったと思うが、山頂付近のみ雪田が残っていて、帰りに三引山の尾根に引き込まれそうになったことだけ覚えている。成功は記憶から消えるが失敗は残るらしい。半分埋もれた山頂標識が立っていた。
オプションは登ったのでメインイベントの三引山に向かう。この稜線もよく締まった雪でほとんど沈まないが、新雪が乗ってアスファルトに砂利が浮いたのと同じ状態でよく滑り、下りではコケそうで歩行速度が落ちると判断、12本爪アイゼンを装着する。オーバースペックだが私の手持ちではこの下のランクは6本爪となってしまい落差が大きいのでしょうがない。6本爪は踵に歯が無いので下りはちと弱い。まあ、この傾斜なら問題ないのだろうけど今回は車に置いてきている。
三引山への尾根に入る | 1920m峰 |
1920m峰手前鞍部付近から見た三引山 |
12本爪の威力は絶大で今まで滑らないようエッジを効かせる歩き方が必要だったのが何も考えず足を下ろしても全く滑らず、ザクザクと小気味いい音をたててアイゼンの歯だけが雪に沈む。気温は未だ-5℃と良く冷えて雪の緩みも皆無だ。樹林が開けた明るい尾根で展望もいい。谷を隔てた東には佐武流山だが逆光気味でイマイチの見晴らしだった。今日はあそこに立つ人がいるだろうか。それとも今は夏道があるのでわざわざ残雪期に登る人はいないだろうか。
1920m峰は南を巻いたが快適に歩けた | 上はカモシカの足跡 |
1920m峰は面倒なので東斜面を巻くことにして鞍部から右にずれて等高線に沿って歩いていく。傾斜はさほどきつくなく、アイゼンが決まって足首への負担もほとんど感じられず快調だ。むろん、無雪期は猛烈な笹薮でこんな芸当は不可能だろう。カモシカの足跡があちこちにあった。
巻き終わって稜線へ復帰 | 鞍部から見た三引山 |
尾根上は笹が出ているので右を巻いた | 巻いている最中 |
後ろを振り返る |
再び稜線に出て樹林の隙間を縫って1860m鞍部を目指す。ここだけ少し木が邪魔をしているが藪漕ぎというほどでは無く、今までが快適過ぎたといえよう。鞍部から先は部分的に笹が顔を出した区間があり、雪の連続する南斜面を迂回することにして、再び稜線を離れて右に斜めに登っていく。標高1900m付近で南尾根に出るがえらい急な尾根で登れないことはないが足への負担が大きいので尾根を乗り越え、やや東側から山頂へと向かった。傾斜が緩んで水平な尾根になるが山頂は一番奥らしくGPSはまだ北を示している。
急斜面を通り過ぎた先で稜線に上がる | 稜線に出た。山頂は一番奥 |
三引山山頂 | 三引山山頂から三壁山 |
三引山から見た東の上越国境(クリックで拡大) | |
三引山から見た志賀高原(クリックで拡大) |
シラビソの点在する尾根を抜けると木がない尾根に変貌、そして最後は枯れたシラビソが立つ三引山山頂に到着した。積雪量は大して多くないようだが三角点を埋めるには充分な量で三角点の位置は確認不可能だった。目印、標識は全く無くほとんど登られないようだ。まあ、地形図に名前が出ていないのだから当然だ。苗場山から堂岩山がずらりと並び、白砂山はさんちょうだけがちょこんと顔を出していた。次に登るときは赤沢山を目指すときだな。
三引山下りの笹。半分埋もれていた | 鞍部から巻き始める。アイゼンが決まって快適 |
三壁山から落ちる谷を越える | 谷の先の北斜面はシラビソ樹林 |
帰りは面倒なので1860m鞍部から等高線に沿ってずっと巻いて登ってきた尾根に出ることにした。雪質は最高だし傾斜もほどほどで問題なく歩けるだろう。鞍部への下りは笹が出ていても重力の助けで簡単に突っ切れるので正確に稜線を下る。まだ霜で白い笹区間はほんの僅かしかなく、半分雪に埋もれているので藪漕ぎにはならずここを登っても良かったようだ。鞍部からは高度を維持しながら歩きやすいところを拾って斜面を水平移動、三壁山から落ちてくる谷を越えるとダケカンバからシラビソ樹林に変貌し薄暗い樹林を抜けるが、ここでも雪質は良くて踏み抜き皆無だった。
一つ尾根を越える | 目的の尾根に続く緩斜面 |
浅間山がくっきり | すれ違った山スキーヤー |
広い尾根を1本越えてなだらかな斜面帯に出ると自分の登りの足跡を発見、これでもうルートを誤る心配はない。キャンプ場向けてガンガン下っていくと山スキーを背負った単独男性が登ってきたが、今日はどこまで行くのだろうか。スキーヤーのトレースはほぼ私の足跡を追っており、時刻が私より遅くて気温が上昇した影響か、私の足跡はほとんど靴底の形状は付いていないのにスキーヤーの足跡はくっきりしていた。
駐車場到着 | 駐車場から見た三引山 |
堰堤でアイゼンを脱いで駐車場にたどり着くと車が3台増えていたが、そのうち1台はいなくなり本日の入山者は私の他に山スキーヤー+もう1名(たぶん白砂山方面)のようだ。昨夜からある車の主はまだ戻ってきておらず、行き先は佐武流山方向かはたまた忠次郎山方面か。この晴天だから今回は大いに楽しめているだろう。私も短時間ではあったが今日は残雪期本来の楽しさを満喫できた。
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